ジニアスコートHA
PVDプロセスによる高密着、高硬度DLC
DLCは、高硬度、低摩擦で耐焼き付き性に優れたコーティングです。 当社では、独自のPVDプロセスによる水素フリーDLCコーティングで油中摺動特性に優れた機械部品DLC「ジニアスコート HA」を提供しています。
- ダイヤモンドに次ぐ硬度で耐摩擦性向上
- 自動車部品等の耐久性をクリアした高密着力、高信頼性
- 潤滑環境下の摩擦抵抗低減に効果
膜種(基本構造)
水素を含まないテトラヘドラルアモルファスカーボン構造の DLC層(ta-C)。
中間層は持たない。
界面の結合力の強さが特徴。
膜密度が高い。
基本物性
DLC
ta-C
干渉色
4000~7000
0.5~1μm
アークIP
PVD
150~250℃
500℃
可
基本特性
Excellent
Good
(ラップ後)
Average
Excellent
Excellent
Good
Average
Excellent
※密着力については一般的なDLCの認識を水準として判定
特徴
-
1.圧倒的な硬度
HAのビッカース硬度はHv4000~7000。ダイヤモンドに次ぐ硬度であり、コーティング面の耐摩耗性を飛躍的に向上します。
-
2. 自動車メーカーが認めた密着力
ジニアスコートHAは、基材との密着力に優れる信頼性の高いコーティングです。
ジニアスコートHAの密着力を高めるために、プロセスや成膜条件を研究し、十分な密着力を持たせることに成功しました。
現在、ジニアスコートHAは、自動車のエンジン周辺部品にも使われています。 自動車メーカーの厳しいテストに合格し採用された実績が、ジニアスコートHAの信頼性の高さの証と言えます。 -
3. 摺動性に富み、耐摩耗性に優れたコーティング
ダイヤモンドは、最も低摩擦特性(摺動性)に優れる物質と考えられていますが、ジニアスコートHAは、それに次ぐ摺動性を有しています。
無潤滑環境下でも他のDLCと同様に優れた低摩擦特性を持っていますが、特に潤滑環境下でその性能をさらに伸ばし、ダイヤモンドに迫るほどの数値を叩きだしています。 -
4. 軟質金属の凝着を防止
DLCは化学的安定性の高いコーティングであり、特にHを含まないta-C型のジニアスコートHAでは、軟質金属との凝着(溶着)防止に対する優れた性能を持っています。
アルミ、銅、銅合金(真鍮、洋白、リン青銅等)、亜鉛メッキ、すずめっき、銀、金などの材料あるいはこれらの材料がメッキされた部材を加工する切削工具や金型、またそれらの材料でできた部品との摺動が求められる部品等にジニアスコートHAをコーティングすると、耐摩耗性を向上するとともに、溶着を防止できるようになります。 -
5. 耐熱性の高いDLC
ジニアスコートHAは、水素を含有しないため、耐熱性が高くなっています。 水素含有DLCの耐熱性が350℃程度であるのに対して、ジニアスコートHAは500℃になっています。
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6. 表面平滑性の調整
コーティング後のラップ処理により粗大粒子を除去し、膜の表面平滑性を改善することができます。
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7. 耐腐食性、耐凝着性に優れたコーティング
DLCは、そもそも化学的に大変安定した化合物ですので、腐食性ガスへの耐久性を高めることが可能になります。
標準試験データ(特性比較データ)
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・ジニアスコートHAの摩擦係数低減効果の比較
クロムモリブデン鋼(SCM415)に、水素フリーDLCであるジニアスコートHAをコーティングした場合の、無潤滑環境下と油中環境下での摩擦係数低減効果を検証しました。
無潤滑環境下でも、水素含有DLCと同様の効果があることが認められますが、油中環境下では、水素含有DLCを超える摩擦係数低減効果があることが確認できました。【試験条件】
- ・相手材:SUJ2
- ・基材:SCM415
- ・浸炭材荷重:80N(max 1.5GPa)
- ・すべり速度:1000m/sec
-
・高負荷圧痕剥離試験の比較写真
ジニアスコートHAの基材との密着力を評価するために、ロックウェルCスケール圧痕試験を行いました。
従来のDLCコーティングでは、圧痕周辺部に剥離が認められますが、ジニアスコートHAでは、密着状態を保っていることが確認できました。
相性データ
基材 | 炭素鋼 | 合金工具鋼 | ハイス | ハイテン | SUS | 軸受鋼 | 超硬合金 |
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HP | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
相手材 | 炭素鋼 | 工具鋼 | ハイテン | SUS | 鋳鉄 | 銅 | アルミ合金 | プラスチック |
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HA | △ | △ | △ | △ | △ | ○ | ◎ | △~○ |
相手材 | 炭素鋼 | 工具鋼 | ハイテン | SUS | 鋳鉄 | 銅 | アルミ合金 | プラスチック |
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HA | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ |
除膜、再コーティングについて
可能
用途と効果
膜の厚いHAは、耐摩耗性の高さや膜強度への信頼性、油中での低摩擦性から、自動車部品や高負荷機械部品への適用が多くなっています。
自動車部品
バルブリフターなどシリンダーヘッド、ガスケット、カム、吸排気バルブ、トランスミッションなど、過酷な摺動条件で使われる部品での採用実績もございます。
(参考資料)
第5回新機械振興賞受賞 エンジン用水素フリーDLCバルブリフター
http://www.jspmi.or.jp/system/file/3/893/N05-06.pdf
軟質金属用切削工具
アルミや銅などの軟質金属およびその合金の切削工具の溶着対策にはHAコーティングが効果的です。
また、切削工具では、切屑排出溝への被削材切削屑の凝着による詰まりも問題になることが多いですが、HA-DLCコーティングを行うことで、切屑排出性を改善することができます。
軟質金属用金型、接点端子・電極加工用金型
アルミ、銅、銅合金(真鍮、洋白、リン青銅等)、銀、金メッキ、亜鉛メッキ、すずめっきなど溶着しやすいワークに対して、曲げ、絞りなどの加工を行う金型では、ワークの溶着による加工品質の低下やメンテナンス性の悪化といった問題が生じますが、HA-DLCのコーティングによって、溶着を防止するとともに、仕上げ面を綺麗に保つこともできるようになります。